海城高校 × シェイクスピア Vol. 7『コリオレーナス』
2025.12.02
11月に高校1年芸術鑑賞会「海城高校×シェイクスピア vol.7『コリオレーナス』が行われました。
この公演は海城高校の1年生を対象とした「芸術鑑賞会」の演目として製作・上演されながら、参加を希望する高校1年生の生徒と教職員が、第一線で活躍している俳優、演出家、舞台美術、音響、舞台監督などのスタッフとともに、本格的なシェイクスピアの作品の上演を行うという全国でも海城高校でしか行われていない、特別かつ最先端の企画です。
これまで『ジュリアス・シーザー』(2016年、2019年、2023年)、『ハムレット』(2017年)、『マクベス』(2018年、2024年)を上演。今年度は『コリオレーナス』の上演となりました。
高校1年生が鑑賞する芸術鑑賞会は11月21日(金)に行われ、他学年の生徒や保護者の方々、学外の皆さんにご覧いただいた一般公開公演を11月22日(土)に実施しました。一般公開公演の予約は即日一杯になり、当日はたくさんのみなさまにご覧いただくことができました。
演出を務めて下さったのは、RoMT主宰・洗足学園音楽大学准教授の田野邦彦さん。本校の演劇ワークショップでもお世話になっている方です。出演してくださったのは、太田宏さん(青年団)、亀山浩史さん(うさぎストライプ)、窪田壮史さん。OBの小川洸太さんも出演してくださいました。美術に谷佳那香さん、音響に泉田雄太さん、舞台監督に三津田なつみさん、演出助手に藍実成さんと、プロのスタッフの方々にご協力いただきました。
出演した高校1年生15名は4週間ほどの稽古に懸命に取り組みました。プロの指導を受けながらどんどん素敵な演技をするようになっていきました。






本番では同級生や外部の方の前で演じる緊張をものともせず、全3回の公演を立派にやり遂げました。








公演終了後に見せた生徒たちの誇らしげな笑顔は忘れることができません。参加した教員にとっても大変思い出深い公演となりました。


公演の様子やこの企画に込められた本校の想いなどを理解いただくために、高校1年学年副主任の永田岳教諭の挨拶を紹介します。
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みなさん、こんにちは。
本日は海城高校1年・芸術鑑賞会・一般公開公演にお越しいただき、誠にありがとうございます。
私は、本校英語科で高1学年を担当しております永田と申します。
教員を代表してご挨拶申し上げます。
まず開演に先立ちまして、簡単な諸注意をさせていただきます。
本公演では皆様の目の前にあるステージのみならず、客席間の通路全てが役者たちの演技の場となります。安全のため通路にお荷物を置かれたり、足を投げ出したりすることはお控えください。
加えて、上演中の録画、録音、写真撮影などはご遠慮ください。
本日皆様にご覧いただく「高1芸術鑑賞会」は、ただ生徒たちが舞台を“観る”というだけの行事ではありません。
参加を希望した生徒全員が、第一線で活躍される俳優、演出家、舞台美術、音響、舞台監督といったプロフェッショナルの方々の力をお借りし、ひとつのシェイクスピア作品を創り上げ、同級生たちの前で上演する。
全国でもほとんど例を見ない、海城でしか実現していない特別な企画です。2016年に始まったこの企画は、コロナによる休止を経て、今年で7回目の公演となりました。
そして、このたび上演するのはシェイクスピア後期の作品である『コリオレーナス』。英雄と市民、個人と共同体──さまざまな“境界線”のあいだで揺れる物語です。
先日配布した学年だよりで 弊校国語科の教員中村が、生徒たちに本公演の演出家、田野邦彦さんのお言葉を紹介していました。「アートとともに在った時間は、あたりまえだと思っていたものの見方をがらりと変えてくれる力がある。」また「究極的に言えば、ファンタジーはたぶん《日常そのものが美しく思える》ためにある」とも、田野さんは語っていらっしゃいました。
こうしたお言葉を踏まえると、演劇で描かれる揺れや葛藤を私たちが「自分ごと」として感じ取れるのは、演劇という表現形式が私たちを物語と日常のあいだへと連れ出してくれるからなのかもしれません。
そしてこの企画には、海城が大切にしてきた教育の根幹──他者を肯定すること、自分を肯定すること、そしてその両立を探ること──がはっきりと表れています。
普段、教室での学びをともにする仲間が演じる姿をみることで、同級生がいつもは見せない一面を知ること。誰かが演じる役割やキャラクターが、「その人の可能性のひとつ」に過ぎないと気づくこと。そこには、境界を越えて多様な在り方を肯定するための大切な学びがあります。
今日、この舞台に立つ生徒たちは、自らの殻を破り、境界線を越え、物語の世界と日常を往復しながら作品を形にしてきました。その勇気と挑戦に、どうか大きな拍手を送っていただければと思います。
その拍手が、本日の公演の幕を開けます。
それでは、海城にしかない特別な時間──アートが開いてくれる多彩な可能性を、どうぞ存分にお楽しみください。
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長くなってしまったので、観劇した生徒の感想や出演した生徒のふりかえりについては、また後日紹介します。
